今回はキリスト教における使徒に焦点を当てて解説していきます。使徒の名は「新世紀エヴァンゲリオン」や「ベルセルク」などの創作物で取り入れられており、そこで興味を持った方もいることでしょう。
いざ聖書を読んでみるといきなりでは難しく感じるかもしれませんので、この記事では使徒についてわかりやすくまとめています。
使徒とは
使徒とは、初期のキリスト教において重要な地位を占めた指導者たちのことをいいます。狭義には神の子、イエス=キリストがたくさんの弟子たちの中から福音を伝えるために選んだ12人の弟子、12使徒のことを指します。
12使徒は、ペテロ(シモン)、アンデレ、セベダイの子ヤコブ、ヨハネ、ピリポ、バルトロマイ、トマス、マタイ、アルパヨの子ヤコブ、タダイ、熱心党のシモン、イスカリオテのユダの12人から構成されています。ただ後にイスカリオテのユダはイエスを裏切り、その代わりにマッテヤが12使徒の一員となりました。
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イエスと12使徒の軌跡
イエスは宣教活動を始めて間もなく、ガリラヤ湖で漁師をしていた兄弟、ペテロとアンドレに出会いました。彼らは漁に出ても何もとれないことに困っており、イエスは沖で漁をするように助言をしました。すると網が破れそうになるほどのおびただしい数の魚が取れました。驚く彼らに、イエスは「私について来なさい。人間をとる漁師にしよう」と言い、ペテロとアンドレは最初の弟子となりました。「人間をとる」とは、イエスの教えを宣べ伝えるということです。
その後もイエスは宣教を続け、また人々の病気を治したり、嵐を静めるなどの数々の奇跡を起こして、イエスに従う弟子を増やしていきました。イエスは福音を伝えるために、その弟子の中から12使徒を選びました。
しかしイエスの教えは従来のユダヤ教の考えに反するものであったため、当時の律法学者や祭司長などのユダヤ教の指導者たちはイエスらを異端視し、反感を抱いていました。
そんな中、弟子の一人であるイスカリオテのユダはユダヤの祭司長に会いに行き、銀貨30枚でイエスの身柄を引き渡すことを決めました。つまりユダは裏切りを企てたのです。
ユダの裏切りを予感したイエスは12使徒との食事の時、「はっきり言っておくが、あなた方のうちの一人がわたしを裏切ろうとしている。」と一同に告げました。この食事会はイエスが処刑される前夜に行われたため『最後の晩餐』と呼ばれています。
以下のレオナルド・ダ・ヴィンチの作品『最後の晩餐』はその時の情景を描いています。
左からバルトロマイ、アルパヨの子ヤコブ、アンデレ、イスカリオテのユダ、ペテロ、ヨハネ、イエス、トマス、セベダイの子ヤコブ、ピリポ、マタイ、タダイ、熱心党のシモン。
最後の晩餐を終えた後、イエスは弟子たちとゲツセマネに行き、そこでユダの裏切りに合いました。ユダがイエスに接吻することを合図に、群衆がやってきて、彼らはイエスを捕らえました。その後、ユダはイエスを裏切った罪の意識によって自殺してしまいました。
それから、イエスは大司祭カヤパのもとへ連行され、裁判で神を冒涜したとして死刑判決を受けました。イエスが十字架刑により息を引き取った三日後、イエスは復活し、天に昇っていきました。
イエスの昇天後、ユダの代わりにマッテヤが12使徒に選ばれ、使徒たちはイエスの教えを伝導していくことに努めました。強い迫害を受け、12使徒の内ヨハネ以外は殉教しましたが、彼らはキリスト教の母体を作り上げました。
12使徒一覧
ペテロ(シモン)
イエスの最初の弟子の一人。イエスの弟子になる前はガラリヤ湖で漁師をしていました。初代ローマ教皇。ローマでの布教の際、皇帝ネロの迫害により殉教したとされます。
アンデレ
イエスの最初の弟子の一人。イエスの弟子になる前はガラリヤ湖で漁師をしていました。ギリシアでX字型の十字架で架けられ、殉教したとされます。
スコットランドとギリシャでは守護聖人とされており、スコットランドの国旗にはアンドレが架けられたX字型の十字が象徴として取り入れられています。
セベダイの子ヤコブ
アルパヨの子ヤコブと区別するために、大ヤコブともいわれます。ペテロ兄弟と同じく、イエスの弟子になる前はガラリヤ湖で漁師をしていました。パレスティナでヘロデ・アグリッパの迫害により殉教したとされます。
ヨハネ
ペテロ兄弟と同じく、イエスの弟子になる前はガラリヤ湖で漁師をしていました。新約聖書の「ヨハネによる福音書」「ヨハネの黙示録」「ヨハネの手紙」を書いたといわれています。12使徒の内ヨハネのみは殉教しなかったとされます。
ピリポ
ペテロやアンデレと同じくガリラヤ地方のベツサイダ出身です。バルトマイにイエスを紹介しました。フリギア(現在のトルコ)で殉教したとの伝承があります。
バルトロマイ
ピリポの紹介によりイエスの弟子になりました。アルメニアで皮剥ぎの刑により殉教したとされることから、バルトマイを描いた絵画には自身の剥がれた皮とナイフを持った姿を象徴的に描かれることがよくあります。
トマス
疑い深く、他の使徒からイエスが復活したとの話を聞いても、イエスの姿を見てまでは信じようとしませんでした。インドで伝道したとされます。
マタイ
イエスの弟子になる前はローマ帝国の徴税人でした。『マタイによる福音書』の著者であるという説がありますが、確証されてはいません。
アルパヨの子ヤコブ
ゼベダイの子ヤコブと区別するために、小ヤコブともいわれます。
タダイ
ユダともいわれますが、イスカリオテのユダとは別人です。イエスの兄弟ではないかとの伝承があります。
熱心党のシモン
武力によってローマ帝国の権力に立ち向かう熱心党に所属していました。ペルシアで殉教したとの伝承があります。
イスカリオテのユダ
12使徒の内、イスカリオテのユダのみガリラヤ地方の出身ではありません。裏切りを企て、銀貨30枚でユダヤの祭司長にイエスの身柄を引き渡すことを決めました。その後、イエスを裏切った罪の意識から自殺をしました。
マッテヤ
イスカリオテのユダの裏切り後、ユダの代わりとして12使徒に選ばれました。
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最後に、筆者がキリスト教の理解を深めることに役立った書籍をご紹介します。入門的なものを中心に選びました。
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